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キズナのキセキ ちょっと気が強い神姫と、理想を追い求めたマスターの、絆の物語。 著:トミすけ ○勝手な文章の改変はしないでください。大変迷惑です。 ○バトルロンドのバーチャルバトルの設定を『Mighty Magic』よりお借りしております。 ○一部、武装神姫の性能などを独自解釈している部分があります。ご了承下さい。 ○本作は前作「ウサギのナミダ」の続編です。前作からのキャラクターや設定が引き続き登場しますので、先に「ウサギのナミダ」をお読みになることをお勧めします。 ○コラボ歓迎です。この作品のキャラクターや設定は無理のない限り、自由にお使いいただいてかまいません。 登場人物紹介 (本編のネタバレを含みますのでご注意下さい) ~予告編~ ストーリー ACT0は過去編、ACT1は現在編となっています。 それぞれのACTごとの順番で、時系列順に追うことが出来ます。 お読みになる際には、下記リストの順番でお読みいただければ幸いです。 プロローグ ACT1-1 不機嫌の理由 ACT1-2 情けないほど何も知らない ACT0-1 悲劇の後 ACT0-2 ひどい顔 ACT1-3 かりそめの邂逅 ACT1-4 敗北の記憶 その2 ACT1-5 北斗七星 ACT0-3 アイスドール ACT0-4 二重螺旋 ACT0-5 敗北の記憶 その1 ACT1-6 招かれざる客 ACT1-7 聖女のルーツ その1 ACT1-8 聖女のルーツ その2 ACT1-9 雨音 ACT1-10 最悪の事態 ACT0-6 異邦人誕生 その1 ACT0-7 異邦人誕生 その2 ACT1-11 夕暮れの対峙 ACT1-12 ストリート・ファイト その1 ACT1-13 ストリート・ファイト その2 ACT1-14 謝ることさえ許されない ACT1-15 たった一つの真実 ACT1-16 男たち ACT1-17 遠野の企み ACT1-18 強者たちの宴 ACT1-19 親友だから その1 ACT1-20 親友だから その2 ACT1-21 キズナのキセキ ACT1-22 異邦人はあきらめない ACT1-23 決戦前夜 ACT0-8 理想の体現者 ACT1-24 武士道 ACT1-25 聖女の正体 ACT1-26 狂乱の聖女 ACT1-27 未知との対峙 ACT1-28 すべてがつながるとき ACT1-29 死闘の果て エピローグ 番外編 黒兎と盗賊姫 前編 後編 この物語は、以下の作品の設定やキャラクターをお借りしております。 深み填りと這上姫 HOBBY LIFE,HOBBY SHOP 魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン ねここの飼い方 Mighty Magic ツガル戦術論 武装神姫のリン 凪さん家の十兵衛さん クラブハンド・フォートブラッグ 美咲さんと先生 15cm程度の死闘 武装食堂 感想などありましたら、こちらにコメントをお願いいたします。 過去ログはこちらにまとめました。↓ キズナのキセキ コメントログ キズナのキセキ コメントログ・2 キズナのキセキ コメントログ・3 キズナのキセキ コメントログ・4 初めてコメントします。 あおいお姉様のしてきた事を考えると手放しでハッピーエンドはやはり難しいですか… それでも私は二重螺旋が笑顔で迎えるエンディングを期待しながら、最終話の投稿を楽しみに待って居ります。 -- Yu (2012-08-16 01 55 08) アツい戦いでwktkです!! ついに最終話!!楽しみに待ってます~ -- 神姫中毒 (2012-08-16 10 39 54) 最終回、とても楽しみです! コラボしたいんですが、何分バトロンから8年も経ってるとコラボしづらいですよね…… -- ユキ (2012-08-16 12 08 53) 死ぬな! 生きて帰って来て欲しい -- げしもちゃん (2012-08-16 21 20 17) さて、遠野が何を考えているたのかの種明しが楽しみですね。 このまま終わったら奈々子が報われん。まああの刑事はおそらく……。 -- 第七スレの6 (2012-08-17 23 48 21) エピローグを投稿しました。最終回です。コメントログもまとめました。 初投稿をさかのぼりますと、なんと二年も経っていました。 執筆の遅い私の作品に長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。 また、多くのコラボ作品の筆者様、素晴らしい作品をありがとうございます。皆様の作品なくして、「キズナのキセキ」はありませんでした。 ……あとがきを書こうと思ったのですが、どうにも陳腐なものしか思い浮かばず、断念しました。 一つ私が言うならば、「キズナのキセキ」という作品は、完結を持って作者の手を離れ、読者の皆様のものになったということです。 願わくばこの物語が、皆様に気に入ってもらえることを祈りつつ、筆を置きたいと思います。 長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。 -- トミすけ (2012-08-23 23 15 12) コメントにお答えいたします。 Yu様>初コメントありがとうございます。嬉しいです(^^) エンディングはこのような感じになりましたが、いかがだったでしょうか。お楽しみいただけたなら、嬉しく思います。 神姫中毒様>戦闘シーンは、私も書いていてとても楽しかったです。最終回はいかがだったでしょうか。 げしもちゃんさん>まあ、死んだりはしなかったわけですがw 最終回もお読みいただければ幸いです。 第七スレの6様>長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。エピローグはいかがだったでしょうか。 -- トミすけ (2012-08-23 23 19 55) コラボの件があるので、別コメントで。 ユキ様>コメントありがとうございます。コラボはこのページの上にもあります通り、歓迎です。 時系列については……気にしなくていいんじゃないでしょうか(^^; そうじゃないと、バトマスから入った人の作品は、バトロン時代の作品とコラボできなくなってしまいますから。 そこは自由に考えていただいて、キャラ設定とかはそのままに、バトマスに合わせた戦術戦略なんてのを妄想するのも楽しいと思います。 -- トミすけ (2012-08-24 00 42 39) キズナのキセキ完結お疲れ様でした。 そして、おめでとうございます。 題名通りの「絆」が起こす様々な「奇跡」によって、この素晴らしい物語が完結しましたね~ この度、エピローグを読み終わったのでコメントをしてみたのですが、これから後の物語も外伝として是非読んでみたいです。 遠野さんと菜々子さんの今後。(警察へ連絡をしていた事による言い訳等の痴話喧嘩) ティアとミスティの会話。(ティアがミスティのメンテナンス中に聞いた初代ミスティからの伝言を伝えたり等の2人の絆の確認) 桐島あおいと久住菜々子のコンビプレイ復活劇。(往年の二重螺旋の復活とその活躍風景等) -- ウサギの (2012-08-24 01 13 42) 更に追記。 そして、今回のキズナのキセキのエピローグを読んでみて思ったのですが、マグダレーナは警察に逮捕され、丸亀重工への証拠物件として警察に保護されたままで終わるのか?と思いました。 マグダレーナ自身、イリーガルとして、裏バトルに参加し様々な違法改造された神姫を殺しているし、桐島あおいを助ける為に人を傷つけていたりするかもしれません。 それに、丸亀重工が軍事目的の為に開発した強力な神姫なので、普通には開放出来ないというのは分かるのですが、マグダレーナにも救いが欲しいと思いました。 意識と本人の記憶等、犯罪に繋がる部分を除去して、普通のシスター型として、桐島あおいの元に戻ってきてくれたら良いのにな~と、エピローグを読んでいる途中から思い続けています。 トミすけさんの中では、これで完全に完結しているのでしょうが、マグダレーナへの救いも欲しいと思いました。 桐島あおいとマグダレーナの為の「キズナのキセキ」があっても良いかな~と。 読者が、ウダウダと好き勝手に書いていて申し訳ありません。 大変素晴らしい物語をありがとうございました。 -- ウサギの (2012-08-24 01 14 17) ついに完結ですか。長かったようで実際に楽しんだ時間は短かったというか…。 これで残念ながら楽しみが一つ減ります。お疲れ様でした。 やっぱりあの刑事でしたか。もう店長と並びお馴染ですね。 この後どうなるのか、劇中では軽く流された遠野の家族関係の変化とかが気になります。 そこら辺も読んでみたいかなぁと思っちゃったりとか、そんな一ファンの感想でした。 -- 第七スレの6 (2012-08-24 10 57 18) くっ…仕事中に読んで不覚にも泣きそうになったです…あくびしたデスとごまかしておきましたが! 読みだした当初からとても大好きな作品で完結したこと、読めたことがとても嬉しく思います。 今後の作品を楽しみにしております! そして完結おめでとうございます!! -- 神姫中毒 (2012-08-24 11 44 17) 物語の完結、お疲れ様です。長い物語での起承転結がしっかりしており、伏線もしっかり回収された丁寧な作りこみは見る度に感心し、学ぶものが多かったです。 話の結末はしっかりとまとまった大団円で見ていて非常に気持ちのいいものでした。 誰にも打ち明けずに進めてきた計画の上での遠野の行動は菜々子を助けるだけでなく、あおいを救い、結果としてマクダレーナの心すらも変えましたな。 異なる三人の傷ついている心を開かせ、周りの人を変えていける遠野は本当に色々な意味で強い人ですね。 たった一人のためにここまでできて、その上、周りを動かしていける人なんてそうはいません。 素晴らしい物語をありがとうございました。トミすけさんの次回の作品を楽しみにしております。 -- 夜虹 (2012-08-24 21 50 59) ついに完結してしまいました……ッ! 読み終えた直後の感想がそれでした。完結、おめでとうございます。 物語の開始当初、あれだけ凶悪だったマグダレーナが、最後にはあおいに対してあれだけの変化を迎えましたね。それも、ミスティとのすべてをかけたぶつかり合いや、あおい、遠野君たちとの関わり合いがあったからでしょうね。 そして、遠野君や仲間たちの力を得て、全力で戦い抜いた菜々子さんとミスティ。彼女たちにも「お疲れ様です」と言いたいです(うちの食堂からも四人も出演させていただいて感激でした)。 トミすけさんの次回作も楽しみにしています。 ……いや、以前のトミすけさんのコメントから察するに、まだ番外編が残ってるんですよね? ね? -- ばるかん (2012-08-25 00 12 46) 完結おめでとう御座います。読んだ後、あぁ楽しかった。と思える本当に素晴らしいエンディングでした。 ただ一つだけ遠野君にツッコミを「気を使うなら、目なんて閉じてないで、菜々子さん分のドーナツをゆっくり選んで来なさい」…まぁソコまで気を回したら遠野君らしくない気もしますが…w もしあるのなら番外編や次回作も楽しみに待って居ます。 個人的には、あおいお姉様に「武装神姫を続けるから私にピッタリの子を選んでね♪」とか無茶ぶりされて右往左往する遠野君と菜々子さんがみたいな番外編がいいなぁとか妄想しておりますw -- Yu (2012-08-28 03 50 18) 読み返し中に怪しい文章ハッケン! 1-18 二つ目の「□」記号の直後「、八重樫さんくらいだ。彼女が考えたの対戦の組み合わせなら」 部分、「考えた対戦の組み合わせ~」なのかな?と思ってみたり・・・ -- 神姫中毒 (2012-08-28 14 17 36) 長い間の執筆ご苦労様でした。 一年半ほど前に神姫を知り、神姫とマスターとの絆を描いた前作 そしてマスターとマスターとの絆を編み上げた今作を、ときには可笑しく ときには大きな感動と共に読ませて頂きました。 やはり神姫の物語は彼女らの存在理由そのものである「絆」という テーマが似合いますね。 個人的に冒頭の桜吹雪に佇む美女二人のシーンや、前作よりも寡黙で 「当たり前の積み重ねだ」と難局を打開する主人公が私の好きな 某古本屋の主の作品とダブり、この先どんなサプライズがあるのだろうかと 妙にワクワクしてしまいました。 ともあれ、完結おめでとう御座いました。 次のエピソードは「女帝」との決戦? 次回作も楽しみにしています。 -- のらくろ (2012-09-03 00 19 35) 遅くなりましたが、完結おめでとうございます。 多くの神姫とそのマスター達が紡いだ絆の物語堪能させていただきました。 他の方も仰っていますが個人的にはマグダレーナさんのその後が気なりますね、きっともう1つの奇跡が起こるのだろうと勝手に妄想しています。 次回作も楽しみにしています。 -- 紙白 (2012-09-04 21 40 54) ご無沙汰しております。 最終回のコメント、たくさんいただきまして本当に感謝しております。 遅くなりましたが、コメントにご返答させていただきます。 ウサギの様>コメントありがとうございます。見たいシーンをいろいろあげていただきましたが、それらは読者の皆様の想像にお任せいたします。 マグダレーナについては、作者からこれ以上申し上げることはありません。もしかしたら、どこか別の物語で登場してたりすると面白いかもしれませんね(笑) 第七スレの6様>投稿開始当時から長らくお付き合いいただきありがとうございました。遠野君の家族関係については……書けるといいなぁ。 -- トミすけ (2013-02-03 00 31 53) 神姫中毒様>当初から大好きと言っていただき、作者冥利に尽きます。ラストも気に入っていただけたならよいのですが。 夜虹様>過分なお言葉をいただき、大変恐縮です。そして、最新作では全面的に夜虹様のキャラクターに出てもらってしまいました。ご容赦いただければ幸いですm(_ _)m ばるかん様>武装食堂から四人出演いただいたこと、大変ありがたく思っております。お待ちかねの番外編、お楽しみいただけたら嬉しいです。 Yu様>お楽しみいただけたようで、胸をなで下ろしています。確かに遠野は気が利きませんねw のらくろ様>コメントありがとうございます。某古本屋の主といえば……京極堂でしょうか。思えば、桜吹雪に美女二人というシーンは、影響があったかもしれません。 紙白様>完結お祝いいただきありがとうございます。久々の投稿、お楽しみいただければと思います。 -- トミすけ (2013-02-03 00 32 35) さて、本編完結から半年近く経って、やっと投稿できます。 この番外編は相当難産でした。 ですが、本編の「特訓場」のシチュエーションにおいて、皆さんが見たい対戦カードではありませんでしたか? いや、私が一番読みたかった対戦なのですw ちょうど夜虹様が新作を投稿された、絶妙のタイミングで一人悦に入っております。 お楽しみいただければ幸いです。 -- トミすけ (2013-02-03 00 36 09) ティアと蒼貴は超一流の神姫ですね 2人のマスターはプロ級です すごいです -- げしもちゃん (2013-02-04 07 38 41) 番外編キター!!! もう待ちわびてましたよ~ 本編ではあまり絡まなかった二人だけに確かに気になるカードでした! 個人的には復帰したアクアとか、成長した虎実の活躍も見てみたいなー…とか 作中に登場する神姫も人間も魅力的過ぎるので見てみたい組み合わせがいっぱいです>< 今後の更新も楽しみにしてますっ!! -- 神姫中毒 (2013-02-04 15 39 53) おせっかいながら文章的な疑問点… 前編 尊氏の序盤のセリフ内 「つまり、ネットワークをに強い神姫ってことだな」 がありましたです。 -- 神姫中毒 (2013-02-04 16 06 44) 後編 2つ目の♦以下 装備を工夫し技を磨いき がありましたです。 -- 神姫中毒 (2013-02-04 16 29 58) 黒兎と盗賊姫、見させていただきました。互いの手札を全て出し尽くしての総力戦は見事でした。 武装奪取をこんな方法で防いでくるとは予想外でしたし、トミすけさんの描く蒼貴の戦い方、動きと学ぶ所も多かったです。 話の内容も最初から最後まで尊と遠野、蒼貴とティアと神姫とマスターの共通の点の光る展開でとても面白いかったです。 実際に対面してみると話し方、戦い方、性格と本当に近いもので、違いは戦い方と進む道ぐらいなものですね。それもまた個性という名の違いで、面白いものですよね。 それにしても尊と遠野が手を組んで立ち向かう事件……もし、あるとしたらいったい何が起きるのか……面白そうですね。 -- 夜虹 (2013-02-07 00 44 24) 何となくウサギのナミダから読み返してて気付いたんですが、一番最初のティアvsミスティ戦で既に二重螺旋って単語が出てたんですね…こんな所に伏線があるなんて…。 って今更気が付いたのかよって感じですね。 -- Yu (2013-02-10 15 18 53) ご無沙汰しております。トミすけです。 この一年ほどで、わたしの作品2作が誰かに加筆されております。 わたしの意図しない文章が入っているのは、正直気味が悪いです。 これより修正していきますが、現状ではわたしが意図しない文章や展開が含まれることをご了承下さい。 他のサイトでの公開も検討中です。 -- トミすけ (2023-02-05 00 19 15) 文章の修復が完了しました。 本来のキズナのキセキをお楽しみいただけます。 文章を自分の好みで勝手に改変するのは、作者にも読者にも迷惑ですのでおやめください。 -- 名無しさん (2023-02-05 11 51 52) 名前 コメント
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キズナのキセキ ACT1-6「招かれざる客」 ◆ 店の入り口から入ってきたその客に、最初に気が付いたのは、安藤智也だった。 火曜日の夕方、学校帰りのゲームセンターは、安藤にとってもはや習慣である。 平日は安藤とLAシスターズ、そして大城というメンバーが集う。 そう言えば、この週末は、遠野と菜々子が来なかった。実に珍しい。 大城が二人と連絡を取ろうとしたが、出来なかったという。 何かイヤな予感がする、と表情を暗くしたのは八重樫美緒であったが、 「二人で遠くにデートにでも行ってるんじゃない?」 などと、江崎梨々香は明るく言った。 少し心配ではあるが、二人にもそれぞれ事情があるのだろう。安藤はそう思った。 ゲームセンターは今日も盛況だ。 安藤が所属しているチームのメンバーも、こぞってバトルをしている。 一戦終えた安藤は、いつも遠野が定位置にしている壁に背をつけた。 隣には大城大介がいる。 彼は安藤とはまったく違うタイプの男で、歳も上であったが、なぜか気を許せる人物だった。 二人並んで缶コーヒーを飲みながら、バトルを観戦している。 そんな時、くだんの客が入ってきたのに、安藤は気が付いた。 落ち着いた色のコートと、えんじ色のベレー帽を身につけた女性。 かすかな微笑を浮かべたその美貌に、安藤でさえ、はっとさせられる。 手には、黒鉄色のアタッシュケース。神姫マスターか。 彼女はゆっくりとこちらへやってくる。 「大城さん、今入ってきた、あのお客……」 「ん? どの客だ……って、うほ!」 大城はあっと言う間に相好を崩した。この男、美女に目がない。 安藤は思わずため息をついた。大城に注意を促したのは、目をハートにさせるためではないのだが。 その女性を安藤は見たことがなかった。大城は知っているかと思って声をかけたのだが、 「何かお困りですか、お嬢さん?」 などと妙に格好つけた声で話しかけているところを見ると、どうやら知らない顔らしい。 その女性は、安藤たちの近くまでやってくると、うっすらと微笑んで、言った。 「ここに、久住菜々子は来ている?」 予想外の問いに、安藤も大城も、一瞬反応できない。 二人は顔を見合わせた後、大城が答えた。 「菜々子ちゃん? 今日は……というか、ここんとこ来てねえけど……」 「そう……残念ね」 「君は、菜々子ちゃんの知り合いかい?」 「ああ、ごめんなさい……わたしは桐島あおい。菜々子の昔なじみです」 名乗りながら、鮮やかに微笑む。 安藤はその笑顔に、一瞬、違和感を感じた。 なんだろう。おかしなところなど、何もないはずなのに。 「俺は大城大介」 「安藤智也です。菜々子さんとはチームメイトです、二人とも」 「チーム? あの子が?」 「そうさ! 久住菜々子所属のチーム『アクセル』と言えば、ここらじゃちょっとは知れたチームなんだぜ?」 桐島あおいと名乗った彼女は、とても驚いた様子だった。 菜々子さんがチームを組むことがそんなに意外だろうか。菜々子は社交的な性格だし、チーム結成を言い出したのも菜々子の方からだと聞いている。 昔の菜々子は、もっと違う性格だったのかな、などと安藤は思った。 「チーム『アクセル』ね……結構強いの?」 「そりゃあ強いさ。『エトランゼ』のミスティは説明はいらないよな。俺の虎実はこのゲーセンじゃランキングバトルのチャンプだし、この安藤とオルフェだって、バトル歴は浅いけど、結構な実力なんだぜ?」 「へえ……」 「まあ……チームリーダーが勝負にあんまりこだわらないってのが、困りものなんだが」 「勝負にこだわらない……?」 「ああ。遠野って男なんだが、驚くほど勝負に欲がないんだよなぁ。試合内容重視っつーか」 そのとき、あおいがまた、鮮やかに微笑んだ。 「だったら、わたしとバトルしません?」 「君も神姫マスターなのか?」 「ええ、もちろん。菜々子と知り合ったのも、武装神姫が縁なの」 「そりゃいい。菜々子ちゃんの昔なじみなら大歓迎だぜ」 しかも美人だし、と大城は付け加えた。安藤は苦笑する。大城さんは相変わらずだ。 ここで、大城の肩にいて話を聞いていたティグリース型の神姫が、桐島あおいに呼びかけた。 「おい、あんた……桐島あおい、だったっけか?」 「ええ。なに?」 「バトルすんのはかまわないけど、あんたの神姫は?」 「ああ……そうね、先に紹介するわ。出てきて、マグダレーナ」 あおいはアタッシュケースを取り出すと、取っ手のボタンを押した。 重い音を立ててケースが開く。 虎実は見た。 そこに佇むのは、闇のように真っ黒な神姫だった。 「……ハーモニーグレイス?」 塗装が微妙に違っているが、修道女をモチーフにした武装神姫・ハーモニーグレイス型に間違いない。 不機嫌そうな表情で、虎実をねめつけている。 「敵と慣れ合う気は、さらさらないのだがな」 ひどくしわがれた、老婆のような声。 なんだ、こいつは……。 通常のハーモニーグレイス型のような明るさ、愛想の良さなど、まるでない。 虎実は得体の知れない不気味さを、マグダレーナと名乗る神姫から感じていた。 虎実は警戒する。しかし、 「こんな美人とお近付きになれるとは、武装神姫様々だなぁ」 彼女のマスターはまったく緊張感がない。 虎実は怒り狂いたいのをこらえつつ、大城にだけ聞こえる声で囁いた。 「アニキ」 「何だよ、また妬いてんのか?」 「ばっ……! ちげーよ! ……まさかアニキ、相手を見くびってないだろーな?」 「まさか。菜々子ちゃんの昔なじみってんなら、気が抜ける相手じゃねーっての」 鼻歌交じりでそう言う大城の言葉は、まったく説得力がない。 ハーモニーグレイスと言えば、チームの少女たちの神姫と同様、武装を簡略化して低価格化を実現したライトアーマー・シリーズの一体だ。 戦闘力自体は、フル装備の武装神姫がおそれるほどではないが、ゲームセンターで戦うときには、油断は出来ない。 どんなカスタマイズが施されていても、おかしくはないのだ。素体がライトアーマー・シリーズでも、武装が要塞並ということだって、ないとは言えない。 だが、マグダレーナというこの黒い神姫の不気味さは、そんなことではないような気がする。だが、具体的に言葉に出来ない。 我がアニキのなんたる空気の読めなさ。 虎実はため息をついた。 ◆ ステージは「廃墟」が選択された。 虎実にとっては得意のステージである。 ティアやミスティと、何度もここで戦った。一番経験のあるステージである。 虎実は、高速タイプに組み替えた「ファスト・オーガ」に乗っている。 このファスト・オーガを手足のように操る操縦技術、それこそが虎実最大の武器であった。 虎実は砂埃舞うメインストリートを疾駆している。 相手がノーマルのハーモニーグレイス型なら、ライトアーマー・クラスの軽装備のはずだ。その場合、路地などに隠れながら様子をうかがうのが定石である。 それをおびき出すために、わざと目立つように走っているのだ。 小細工は虎実と大城が得意とするところではない。 自らを囮にして、一気に勝負を決める。 虎実は前方を注視する。 いた。 あの黒く不気味な修道女型。 特別な装備は、腰を取り巻くスカートアーマーくらいだろうか。手にしたキャンドルと十字架型のマシンガンは、ハーモニーグレイス型のデフォルト装備である。 虎実は気にせず、アクセルをふかし、一気にマグダレーナに迫った。 機首に取り付けたバルカン砲を撃つ。 マグダレーナがさらりとした動きでかわす。 しかし、砂煙と銃痕で動きは制限された。 ファスト・オーガでそのまま挽き潰すべく、突っ込む。 手応えは、ない。 マグダレーナは虎実の突撃を、紙一重でかわしていた。 だが、甘い。 マグダレーナの目前を通り過ぎた刹那、虎実は上体を上げ、ファスト・オーガの機首を持ち上げると、突進の勢いを回転に変えた。 フローティングユニットを軸に、コマのように回転する。 「吹き飛べっ!!」 バットのように振り出された機首が、マグダレーナに迫る。 虎実は確信する。この奇襲はかわせない。 だが、マグダレーナには慌てた様子もない。 ファスト・オーガの一撃が迫る。 「こうか?」 一言発し、マグダレーナは地面に身体を投げ出すように身体を傾けた。 地面スレスレまで身体を倒し込みながら、スライドするように飛ぶ。 頭上を、エアバイクの機首が駆け抜けた。 「なっ……ばかなっ!!」 再びファスト・オーガの機首が回ってきたときには、マグダレーナはその回転範囲から逃れていた。 今の回避方法を、虎実は知っている。 ビッテリーターン。 スキーのターン技術の一つだ。 ティアと初めて対戦したときに、彼女がかわすのに使った。 その技を、どうしてこの神姫が使う!? 得意の奇襲がかわされたことより、そのことに驚きを隠せない。 回転を立て直し、虎実はマグダレーナと対峙する。 マグダレーナはすでに立ち上がっていた。口元に不気味な笑みを浮かべて。 虎実は寒気に襲われた。 本当に、得体が知れない。 そんな思いを振り払うべく、虎実はバルカン砲を放った。 「おおおおおおぉぉっ!!」 吼える。 近距離からの弾丸の雨。ライトアーマー・クラスの装甲では持ちこたえることは不可能だ。 はたして、マグダレーナは宙にいた。 一挙動でジャンプし、砂煙から飛び出して、虎実の頭上を越えようとする。 マグダレーナは空中で虎実を狙い撃った。 しかし、虎実もそれは察知している。 その場でファスト・オーガを最小半径でターンさせ、射線をはずした。間髪入れず、アクセル・オン、エアバイクをダッシュさせる。 狙いは、マグダレーナの着地点。 黒い修道女は、ふわり、と宙を舞い、着地した。 やはり、あのスカートアーマーは装甲だけではない、特殊な装備のようだ。 再び向かい合う両者。 虎実も走りながら、大剣「朱天」を抜いた。身の丈ほどもあるこの剣は、ティグリース型のデフォルト装備である。それを片手で軽々と振る。 視界の中のマグダレーナが迫る。 彼女もまた、手にしたキャンドルを武器に選んだ。短い柄のついた三本のキャンドルの先から、光の刃が現れる。ライトセイバーの三つ叉槍。 「だあああああぁぁぁっ!!」 虎実の気合い声に対し、マグダレーナは無言。 高速ですれ違う瞬間、二人は同時におのが武器を振り抜いた。 はたして、虎実の大剣に手応えはなく、ファスト・オーガはフローティングユニットの接続部から真っ二つに断たれていた。 「う、わあああぁっ!?」 動力を失い、虎実を乗せたファスト・オーガの前半分がつんのめるように地面に接触した。 転倒し、虎実は地面に投げ出される。 「くそ……」 「朱天」を手に立ち上がろうとしたその時、黒い影が立ちはだかる。 マグダレーナ。 その闇のように黒い影は死神のように、虎実の瞳に映った。 三つ叉のビームランスを構えている。 それでも、虎実が立ち上がろうと勇気を振り絞った。 しかし。 「その魂、しばらく預かるぞ」 ためらいもなく、三つ叉槍が振り下ろされる。 マグダレーナの一撃は、虎実の身体を貫いた。 「ぐあああぁぁ……っ! ……あ……」 虎実の瞳から光が消える。身体から力が抜け、地に伏した。 バトルはマグダレーナの勝利で幕を閉じた。 この時は、まだ誰も、異常に気が付いてはいなかった。 ◆ 「虎実!? おい、虎実、どうした! おいっ!」 大城の必死の呼びかけにも、虎実が応じる気配はなかった。光の消えた瞳を開いたまま、大城の手のひらの上で、力なく横たわるばかりだ。 試合終了後。 アクセスポッドが開いても、虎実は身じろぎ一つしなかった。 大城は不審に思う。いつもなら、試合終了後に真っ先に飛び出してきて、口げんかが始まるのが常だったからだ。 大城はアクセスポッドをのぞき込む。 虎実はいる。 だが、何を言っても、触れても、何の反応も示さない。ただの人形になってしまったかのように。 大城は筐体の向こうを睨みつける。 えんじのベレーをかぶった神姫マスター。 桐島あおいは、穏やかな微笑みを浮かべていた。 「おい、お前……虎実に何をした!?」 大城の大きな声を聞きつけて、周りから神姫マスターたちが集まってくる。 それでも、桐島あおいは慌てる様子を見せない。 「大丈夫。虎実のAIを少し借りただけ。目的を果たしさえすれば、すぐに返すわ」 「AIを、借りた……?」 その不思議な物言いに、大城は首を傾げる。 神姫のAIを借り出すことなど、可能なのか……。 いや、一つ思い当たる節がある。 「AI移送接続ソフト、か……?」 「よく分かったわね」 「なんだって……そんなことをしやがるっ!?」 知らないはずがない。あの時のことを、忘れられるはずがない。 以前、このゲームセンターで、同じようにAI移送接続ソフトを使い、遠野とティアを大ピンチに陥れた奴がいた。 神姫のAIを取り出し、別のサーバーへと送る一種のウィルスソフト。それがAI移送接続ソフトだ。 もちろん、あの事件以来、そうしたウィルスソフトへの対策はしている。 しかし、今のバトルでは、そんな対策も意味を成していなかったようだ。 怒りに猛る大城は、そのことに気付く余裕もない。 拳を握りしめ、回答次第では殴りかからんと、怒りにたぎっている。 あおいは涼しい顔で、答えた。 「わたしのお願いを聞いてもらいたかったの。それを聞き届けてくれれば、虎実のAIはすぐに返すわ」 「なんだとぉ……?」 大城は、桐島あおいに足早に歩み寄ると、強引に胸ぐら掴もうと手を伸ばす。 「そこまでだ、大城大介」 しわがれた声が警告を発した。 あおいの肩にいる神姫が、こちらに向けてマシンガンを構えている。 大城は動けなくなった。 目を見開いて、銃口を見つめるしかできない。 まさか、神姫が人間に銃を向けるなど……常識ではあり得なかった。 大城の背中に冷たい汗が流れてゆく。 「あおいに手を出したら、貴様もただでは済まん」 「イリーガルかよ……」 「どうとでも呼ぶがいい。あおいの話を聞かぬ限り、虎実のAIは戻らんぞ」 あろうことか、この神姫は自らイリーガル……違法神姫であることを肯定した。 百戦錬磨の大城さえも、向けられる銃口にひるみつつあったその時、 「あんた、菜々子さんの師匠だろ? それなのに、イリーガルなんか使って……恥ずかしくねぇのかよ!」 果敢に声を発した少女がいた。 背が高く、少年のような雰囲気の美少女は、園田有希。久住菜々子の弟子を自称している。 「桐島あおいさん……あんたのことは、菜々子さんから聞いてた。菜々子さんの目標とする神姫マスターだって……。 なのに、イリーガルを自分の神姫にして、ウィルスソフトを使ってバトルして……何やってんだ、あんたは!!」 「元気がいいわね、菜々子の弟子は」 「んなこた、どーでもいい! 虎実のAIを返せよ!」 「いいわよ」 「へ?」 有希は間抜けな顔であおいを見た。 桐島あおいは、有希の剣幕にも動じず、柔らかな笑みを浮かべるばかりだ。 「わたしは何も、虎実のAIを消したいわけじゃないわ。なんだったら、わたしたちと勝負してみる? あなたが勝てば、すぐに虎実のAIを返してもいい」 「おもしれー」 腕まくりする有希のその腕を、八重樫美緒が押さえた。 「待って。冷静になりなさい。負けたら、カイのAIだって奪われるかも知れないわ」 「黙ってろよ、美緒。自分の師匠がこんなんじゃ、菜々子さんだってたまらねーだろ。あの人に知れる前に、あたしがオトシマエつけて……」 「あら、菜々子ならもう知ってるわよ」 口を挟んできたあおいの顔を、有希と美緒は見つめた。 「このあいだ、あの子を負かしたばかりだもの」 「なっ……!?」 チームのメンバーだけでなく、その会話を聞いていた『ノーザンクロス』の常連は皆絶句した。 『エトランゼ』のミスティはこのゲーセンで圧倒的実力を誇る神姫として認知されている。 その彼女が敗れた。 ということは、このゲーセンに集う神姫では、マグダレーナにかなわない、ということではないか。 マグダレーナは周囲の様子を見ながら一笑する。 「ミスティが敗れたと知って、気後れしたか?」 「く……」 「ならば、二対一でもかまわんぞ?」 「……それは本気?」 有希の背後から声がした。チームメイトの蓼科涼子である。 涼子は有希の隣に並び、マグダレーナを睨む。 その鋭い視線を、マグダレーナは悠々と受け流した。 「本気だとも。二人がかりで来るがいい」 「その言葉、後悔させてあげるわ」 「ちょっと……涼子!?」 慌てたのは美緒である。 有希だけでなく涼子まで、危険なバトルに挑もうというのか。 「あなた、わかってるの? 涼姫だってAIを奪われるかも知れないのよ?」 「かもしれない、でしょう? 涼姫とカイのコンビなら、虎実にだって……『エトランゼ』のミスティにだって、後れは取らない。美緒だって分かってるはずだわ」 そう言って、涼子は有希と視線を合わせた。二人は不適に笑い合う。 いつもはもっとも身近なライバル同士だが、コンビを組めば『ノーザンクロス』でも指折りの実力になっていた。 それは美緒もよく知っている。 しかし、それでも危険な賭けだと思う。 美緒はどうしても、マグダレーナという黒い神姫から警戒を解くことが出来ないでいた。 あの神姫には何かある。遠野さんなら、今のバトルを見たら分かっただろうか。 「どうした、話はまとまったか?」 老婆のようにしわがれた声が呼ぶ。 美緒は有希の腕から手を離した。 有希と涼子は頷くと、黒い神姫とそのマスターに向かい合った。 「虎実は返してもらうぜ、マグダレーナ」 「わたしたち二人を相手に、勝てると思わないことね」 自信たっぷりの二人に、美緒はただ、無事を祈るだけしかできなかった。 ◆ 大城はマグダレーナに、もはや畏怖すら感じていた。 バトルが始まってもう五分以上が経過していたが、二人の神姫を相手に、マグダレーナはダメージどころかかすり傷一つ負わずに、二人の攻撃をさばき続けていた。 園田有希のカイは、ストラーフ装備に加え、ヴァローナの鎌を持った重装備。 蓼科涼子の涼姫は、装備こそライトアーマー級だが、ワイヤーを使ったアクションは独特の機動で、初見の相手なら翻弄されることは確実だ。 対して、桐島あおいのマグダレーナは、先ほどと同様、スカートアーマー以外はノーマルのハーモニーグレイス型と変わらない軽装備に見える。 涼姫が翻弄し、カイがプレッシャーを与える。 この二人の組み合わせは、ティアとミスティのコンビによく似ていた。 二人の息が合っていれば、並の神姫では太刀打ちできないほどの実力が発揮される。 ましてやこのバトルは二対一。カイ&涼姫のコンビが圧倒的に有利だ。 しかし、マグダレーナは悠然とバトルに望んでいる。 マグダレーナは、攻撃を受け止めることをあまりしない。ほとんどかわしてみせる。 ある意味、ティアに近い戦い方と言えるが、その様子はまるで違っているように、大城には思えた。 ティアは攻撃を察知し、持ち前の機動力で回避する。 マグダレーナの動き出しはティアよりも早い。余裕を持って動き、攻撃範囲外へするり、と移動する。 まるで、何の攻撃が来るのか、事前に察知しているかのように……。 カイがマグダレーナを攻める。得意の近接攻撃は、手数で明らかにマグダレーナを上回る。 しかし、そのことごとくをかわされる。 カイはそれでも手を出し続ける。こいつを自分一人に引きつける。そうすればチャンスが回ってくる。 「はあっ!」 鎌を横に大きく振るう。 とっさに大きく間合いを取るマグダレーナ。 その瞬間、カイの背後を小さな影が追い抜いた。 涼姫が音もなく飛来し、マグダレーナに襲いかかる。 振り子のような独特の軌道と無音の飛翔は、涼姫の真骨頂である。 息もつかせぬ奇襲に、涼姫は成功を確信していた。 しかし。 「えっ?」 カイの背後から飛び出したとき、マグダレーナは地上にいなかった。 目標を見失い戸惑う涼姫の上空に影が差した。 上を仰ぎ見るより早く、涼姫は支えを失い、空中に投げ出された。 「きゃああぁぁっ!?」 無様に地面に転がり落ちる。 廃墟のビルを掴む左手から伸びたワイヤーが切断されていた。 背面跳びのように涼姫とカイを飛び越えたマグダレーナが、すれ違いざまにワイヤーを切ったのだ。 大きく跳ねたマグダレーナは、涼姫の視線の向こうで、着地しようとしている。 しかし、これはカイにとって好機。 短く跳ねて、反動を膝にためる。振り向きながら、膝をのばし、パワーを開放して突進した。 これぞミスティ直伝の必殺技、リバーサル・スクラッチ。 「うおおおおおぉぉ!!」 雄叫びをあげながら突進する。 相手は今着地。そして、あろうことか、こちらに向けて前に出た。 正気か。 リーチも速度もパワーも、こちらが上だ! カイはためらわずに攻撃を繰り出した。 右副腕の爪で裂く。マグダレーナは姿勢を低くして避ける。 左副腕のバックナックル。上体をスウェーさせて回避。 まだ終わらない。 カイは、右下に構えていた鎌を、超速度で斜めに振り上げる。 カイ・オリジナルのリバーサル・スクラッチ三連撃! しかし。 「なっ……!?」 カイは鎌を振り上げることが出来なかった。 さらに一歩踏み込んだマグダレーナが、手にした十字架型の銃器「クロスシンフォニー」で鎌の柄を止めていた。 両者は止まらない。 すれ違うその瞬間、マグダレーナはカイの胸に、ビームトライデントをたたき込んだ。 カイは驚愕の表情のまま、その攻撃を受ける。 そして、瞳から光が失われた。 「カイッ!!」 叫びともに、涼姫は残った右手を撃ち出した。 目標はマグダレーナ。こちらに背を向けている。それは涼姫最大のチャンスだった。 マグダレーナは動いた。 かわさずに、振り向かずに、持っていたマシンガンの銃口のみを背後に向け、涼姫の右手を狙い撃った。 乾いた音を立て、右手がはじかれる。 目標を掴めなかった武装手が地に落ちる。 「そんな……」 呆然とした涼姫の虚を突いて、マグダレーナが振り向く。 地面スレスレを飛翔し、滑るように涼姫に向かってくる。 カイに刺さったトライデントを抜き去り、正面に構えて突進してくる。 涼姫はブレイクダンスのような動きで、頭を下に回転しながら、その攻撃をかわそうとした。 旋回する両脚に隙は見えない。 だが、刹那の間隙を縫って、マグダレーナは三つ叉槍を突く。 涼姫の旋回が止まった。彼女の身体は、三つ叉槍によって、地面に縫い止められていた。 そして、涼姫の瞳から光が奪われる。 ジャッジが無慈悲にも、黒い神姫の勝利を確定した。 マグダレーナの完勝。二人の神姫を相手にかすり傷一つ負わないままでの勝利だった。 「こんなやつに……どうやって……勝つってんだ……」 大城は呆然とそう呟くしかなかった。 ◆ 「しょせん、リーダーが内容重視などとのたまうチームよ。この程度のレベルも当然か……」 マグダレーナの物言いに、誰も口を挟むことは出来なかった。 ミスティ、虎実、カイと涼姫のコンビに完勝できる神姫など、『ノーザンクロス』にはいない。 「……で、そっちの要求は、なんだ」 大城は固い声で言う。 彼女の要求を飲む以外に、三人の神姫のAIが戻ってくることはない。 大城はそう言う他なかった。 有希と涼子も表情を堅くして、桐島あおいとマグダレーナを見ていた。 あおいは満足したように頷くと、変わらぬ微笑を浮かべたまま、大城に答えた。 「菜々子をわたしのところまで連れてきて。わたしともう一度バトルするようにって……そう伝えて」 次へ> Topに戻る>
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第二章 2038/2/17 04:35 同基地 私室 “『特技兵』” 「テーンッ、ハッ!(気をつけ!)」 あれから作戦評価報告書やデブリーフィングに忙殺され、私が寮の自室にたどり着いたのは軽く日をまたいで、そろそろ朝日も登ろうかという時間……にもかかわらず、私の『小さな部下』のうち数体は机の上に直立不動の姿勢でこちらに視線をよこしていた。 「まだ起きてたの?」 「ええ、まだお褒めの言葉をいただいておりません」 気だるく尋ねた私に、ダガーワンチャーリーことC分隊の指揮官を勤めるベックウィズがいたずらっ子のような笑顔を浮かべながら答える。 「褒めろって言いたいのかしら?」 「ええ、私の分隊が間違いなく一番戦功であります」 いけしゃあしゃあと言い切ったベックウィズを一日分の苛立ちを込めてひと睨みすると、彼女はやっと口を閉じた。 心底おかしそうに笑いをこらえてはいたが。 「申し訳ありません、中尉。 ベック、いい加減にしなさい」 隣にいたA分隊の分隊長。 ウェストモーランドがあまりに態度の悪いベックを注意する。 「そうね、ベック。 あのまま死んでもおかしくなかったわ」 「死なないわよ」 B分隊の分隊長。 エイブラムスがモーラに続いて苦言を呈したが、ベックは途端真面目な顔になって答える。 「あのクソッタレな戦場で何度死んでも、バックアップがある。 ですよね、中尉」 彼女の言うクソッタレな戦場……民需用のホビーである彼女たち、武装神姫の戦闘およびフィールド生成システムをDARPA(国防高等研究計画局)が軍需用に改良した最新鋭戦術・戦略シュミレーター『テキサス』の事だ。 サーバーから提供される15エーカー四方の立方体内に想定されるあらゆる条件……地形や気候だけではなく砂や埃による装備の劣化や、一体一体の体調といった概念までも再現するそれは『第二の現実』といっても過言ではなく、ウェストポイント(陸軍士官学校)でも試験的にこのシステムを利用した演習が行われているし、現在の士官教育を一変させるとまで言われている……のだが…… 「それでも、その瞬間までそこでにいた人格は消滅するのよ、ベック?」 バーチャルな死の概念。 それをシステムではデータの消去という形で表す。 彼女たちはある種本能的にそれを恐れ……結果、よりリアリティのある戦闘状況が再現される、というわけだ。 それでも、軍用である彼女たちは民需用では強固なプロテクトがかけられている情報記憶分野のバックアップが可能となっている。 早い話が演習終了時に演習開始前の状態で生き返る。 といえばわかりやすいだろうか? 「一時的な記憶喪失なんか怖くないでしょう? とかく、お褒めの言葉がいただけないようでしたら私はこれで失礼させていただきます」 ベックはかかとを合わせて敬礼すると、すばやく割り当てられたクレイドルへ潜り込み、スリープモードへと移行した。 「……中尉、そろそろお休みになられないとお体に触ります」 少々、あっけにとられていたが、モーラが心配そうに見上げているのに気づき彼女の頭を指先でなぜてやる。 「ベックは悪い奴ではありません。 ですが……」 「戦友を失ったと聞いてるわ。ヒネているというより拗ねてるのよ」 モーラが言葉を詰まらせたあとをエイラスが引き継ぎ、同じ顔をした二体の視線がクレイドルで眠る同胞に注がれる……彼女の名はベックウィズ。 消えかけた特技兵の階級章を付けた、部隊唯一の実戦経験者。
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無頼10「インターミッション」 「たこ焼8個入りに…たいやき2つ」 今日で夏休みも終わる。 何だかんだでいろいろあったここ最近。 思えば、6月上旬にヒカルが来たんだよなぁ…。 はじめは"神姫に対してあまりいい印象が無かった"。 なぜかって? 世のニュースは頭の固いコメンテーターが言いたい放題言ってやがる。 興味のない事は聞き流す事にしているとはいえ、これは物語初期の考えを決めつけるものとなった。 そう、神姫はあまり好きじゃなかった。 …でも、ヒカルと過ごす内に、その考えは変わっていった。 "たとえサイズが違い、機械仕掛けでも、神姫は人間と同じ"と思うようになった。 そしてジーナスも加わり、今に至る。 「形人、どうしたの?」 「いや、なんでもない」 ちょっと心配そうな顔でヒカルがこちらを見る。 こいつも始めのころに比べて、ずいぶん凛々しくなったなぁ…。 気のせいだと思うが。 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 近くのベンチに座り、たいやきを取り出す。 「うぐぅ」が口癖の少女が通る訳もなく、生暖かい風が吹くだけである。 「形人…(きらきら)」「はいはい、たこ焼きだろ?」 たこ焼をヨウジごと渡す…が、ウェットティッシュの類は持ってきてないぞ? 「では、いただくか」 あの店のクリームたいやきはうまいんだよなぁ。 ではあー… ぶぅぉんんん…!(ひゅん!)「ひゃっ!?」 「何だッ!?」 「わたしのたこ焼き…あ!、あれ!」 ヒカルが指差した方向に佇む小さな影。 流線形を描くカウル、上から見るとAの字に見える特殊形態。 そして真紅のボディに胸元があらわなボディスーツの少女。 オーメストラーダ製ハイスピード型武装神姫、"アーク"だ。 そいつがヒカルのたこ焼きををかすめ取ってったのだ。 「へっへーんッ。…あむっ」 予想はついていたが、コイツ…食べ始めやがった。 「ああーっ!? わたしのたこ焼きーッ!?」 「ケチケチしなさんな、あと7つもあるじゃないか」 「至福の時を邪魔されたのに腹が立つんだこの野郎ッ…!!」 ヒカル、口調が変わってるぞ。もしかして素か? 「こらリック! 何をしてんだ!…あれ?」 「!!」 声のする方を振り向く。…が、そこで僕はしばし硬直した。 「あ…あれ…? 君はもしや…」 癖のある紅髪、それをポニーにしている黒いリボン。 つりあがった眼尻に、首から下げられた羽ペンダント…。 黒服に身を包んだその姿に、僕は見覚えがあった。 「…け、形人か…?」 「…ひ、飛竜。飛竜一深(ひりゅう かづみ)か? もしかして…」 その直後彼女に体当たりをされ、一瞬意識が飛んだ。 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 「いやぁ、ホントに久しぶりだなぁ…!」 「だからっていきなり気絶しかねん勢いでぶつかるな」 「いーじゃないのさ、そのくらい」 ここで紹介をしておこう。 彼女は"飛竜一深"、…小学校時代の親友だ。 「…その表現、"恋人"に格上げして…くれないかな?」 「「!!?」」 さらっとすごい事を言われた。 クラっとくる言葉を自重なしで言い放つのは昔からだが…、まさかそんな事が…。 「念のため聞くが、それは冗談だよな?」 「いや…本気で言ってる」 「マジで?」 「マジ」 ………どうしよう風間、こんな事は予想外だ。 「ねぇ! 何故わたしのたこ焼きを狙ったの!?」 "リック"の襟元をつかみ脅迫まがいに問い詰めるヒカル。 「いやさぁ、ただからかっただけじゃないの。何もそこまでムキにならなくても…」 目をそらすリック、ほんの出来心がここまでひどくなるとは思ってなかったのだろう。 「…で、どこの高校に行くんだ?」 「画龍高校1年A組」「僕んとこかよ!?」 信じられん、何か仕組んだか? 「そんな訳ないじゃん」 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 「んじゃ、また明日」「たこ焼美味しかったよ~」 そう言って嵐(一深)は去って行った。 「形人…、あの人って…」 「自称・恋人、か…。頭いてぇ…」 「いいではないか! 押しかけ女房は萌えるぞ!!」 「ってなんでお前がいる光一!!?」 「通りかかったら偶然見つけて、おどかそうと隠れていたらだな…」 そうゆう問題かっ!? ていうか、何を言ってるんだお前は? 「にゃ~はたいやき食べたいにゃ」 「そういえば忘れてた…(呆)」 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
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鋼の心 ~Eisen Herz~ 登場人物+登場神姫の紹介 ◆典雅関係者 島田 祐一(しまだゆういち) 高校生。 神姫暦5年のベテランオーナー。 学校では目立つところの無い平凡な生徒だが、実はガンマニアの刃物マニアで戦闘機マニア。 さらに極めて重度のゲーム中毒(ジャンキー)。 …実は結構ダメ人間かもしれない。 アイゼンのオーナー。 過去に海難事故に遭い、感情を喪失するCSCと言う症状が発症した事がある。 症状自体は完全に回復したものの、いまだに水はトラウマで、基本的に泳げない。 アイゼン タイプ・ストラーフ。 この物語の舞台となる神姫センターにおいて最強クラスの戦積をもつ神姫。 特定の装備や戦術にこだわりは無く、状況に応じた武装と戦術を使いこなす柔軟さを持つ。 それは、実は能力的には大した事の無い彼女が“強くなる”為に選んだ道である。 口数は余り多くなく、無表情で淡々と物事をこなすタイプ。 一度負けた相手には(装備が同じ限り)二度と負けないという変な実績がある。 今のところ例外はマヤアだけ・・・。 伊籐 美空(いとうみそら) 高校生。 勝気で気まぐれ、我侭にして傍若無人。 たぶんツンデレ。 おウチがアットホームなヤクザ屋さん。 一応、対外的には社長令嬢。 フェータのオーナー。 実はクォーターだったりする。 フェータ 刀使いのアーンヴァル。 他の武装を一切持たず、有り余った推力によるすれ違いざまの居あい抜きを武器とする。 本来非力なアーンヴァルが何でこんな戦法なのかは本編を参照のこと。 おしとやかで控えめな性格だが負けず嫌いな一面もある。 リーナ ベルウッド(lina BellWood) 11歳。 金髪ゴスロリのお姫様ルック。 資産家の一人娘。 美空の従姉妹でクォーター。 レライナのオーナー。 日本にはとある目的を持って来日している。 レライナ タイプ・サイフォス。 瞬間移動じみたダッシュを武器にする神速の騎士。 しかし、ダッシュの使用にはバッテリーを大量に消耗するため、戦闘持続時間が短いと言う欠点がある。 リーナの教師として振舞うために、傍若無人な性格を演じているとか? 島田 雅(しまだみやび) 正体不明な祐一の姉。 最近になって神姫を購入。 その魅力に骨抜きにされ、どっぷりハマった挙句、“典雅”という有限会社まで立ち上げてしまった趣味人。 この人が何をやっても驚いてはいけない(笑)。 セタのオーナー。 セタ 砲撃戦を得意とするハウリンタイプの神姫。 特製のセンサーとぷちマスィーンズによる着弾観測を行い、二門の吠莱壱式による曲射砲撃とスナイパーライフルによる狙撃を使い分ける。 実はボクっ娘。そして無駄に元気。 名前の由来はアイヌ語で『犬』の意味。 斉藤 浅葱(さいとうあさぎ) お嬢様ぶる小市民。 雅の幼馴染で悪友。 音速の拳を持つ高校教師。 祐一の担任。 雅、村上の三人でトリオを組んで高校時代は暴れまわった。 実は近隣最強クラスの神姫マヤアのオーナー。 マヤア タイプ・マオチャオ。 11人斬り。化け猫マヤア。などの二つ名で知られる強力な神姫。 ツガルのレインディアバスターを武器に、変幻自在の戦法を取る。 戦闘時は頭を使うが、平時はおバカ。 名前の由来は琉球語で『猫』の意味。 村上 衛(むらかみまもる) 変態。 雅、浅黄の高校からの友人で神姫フェチのメイドフェチ。 勝てないからと称し神姫を購入し続けること40人。 更にマスターでこそ無いが、マヤア、セタもセットアップや武装の提供は彼が手掛けている。 高性能だがピーキーで扱いづらい改造パーツを作るのが趣味。 馬鹿と天才は紙一重の完全に馬鹿サイド。 過去にカトレアと言う名のアーンヴァルを所有していた。 デルタ(デルタ1) フォートブラッグがベースの改造神姫(外見は完全にフォートブラッグ)。 内部を改造されている結果、通常の神姫よりも遥かに高い演算能力を与えられている。 しかし、そこに容量をとられ、実際の戦闘力は決して高くない。 違法改造とも取れる凶悪なシステム=デルタシステムを有し、実質三倍の戦力を有している。 簡単に言えば、ひとつの自我が三つの身体を有しているようなもの。 どれもデルタ自身であるため連携は完璧で、単機の性能の低さは克服していると言える。 公式戦用の隠し技があり、そちら方がある意味凶悪だとか・・・。 村上シスターズ(むらかみしすたーず) 村上衛の40人の神姫たち(デルタ1含む)。 長女はアーンヴァルである。 実はさらに上にもう一人、姉に当たる神姫が…。 基本的に村上家から離れることは無い。 野生化したのが約一名居るとか居ないとか。 ほぼ全員がメイド服着用。さらに30番台からはボクっ子。 村上の趣味が全開である。 ちなみに姉妹ではないが、マヤアは41番目、セタは42番目に相当する。 ◆土方京子と花の四姉妹 土方京子(ひじかたみやこ) 眼帯の女性。 全ての神姫を破壊する目的で行動しているらしい。 黒いコートがトレードマーク。 夏でも黒いコート。 暑いけど我慢しているらしい。 バイク乗り。 結構ドジ。 初期の神姫開発者の一人であり、特にレーザーとスラスター系の技術に優れる。 現在は最愛の妹の願いを叶えるべく、自分を殺して行動中。 カトレア ジルダリア(プロトタイプ)型の神姫。 装備はジュビジーの装備一式にレーザーソード。 四姉妹の長女で、とある神姫と同じ名前である。 かつては、村上衛の最初の神姫であった。 アルストロメリア ツガル型の神姫。 装備はアーンヴァルを中心にしたフルカスタム。 四姉妹の次女で、言語中枢に破損があるためカタカナとひらがなの発音が変。 ストレリチア エウクランテ型の神姫。 装備はエウクランテのものをカスタムした装備。 四姉妹の三女で、舌っ足らずな幼い喋り方をする。 ブーゲンビリア フォートブラッグ型の神姫。 装備もフォートブラッグが中心だが主兵装は別。 四姉妹の末娘で漢字でのみ喋りたがる。 土方真紀(ひじかたまき) 眼帯の女性、土方京子の妹。 CSCの製作者。 京子に全ての新規の破壊を依頼したらしい。 ちなみに、MMSの素体デザイナーである浅井真紀さまが名前の由来。 そして、同時に真紀=しんき=神姫という言葉遊びも入っている。 幽霊(???) 一番最初の神姫。 黒い衣装と二刀を扱う高速戦闘型神姫。 現在は幽霊として天海の神姫センターに出没している。 現行の神姫としては間違い無く最強の部類。 ◆その他のオーナーと神姫 永倉 辰由(ながくらたつよし) 通称パイソンの辰。 アットホームヤクザこと、伊藤組(美空の家)組長、伊藤観柳斎の懐刀。 堅気の衆には礼儀正しい紳士的な極道。 モンティ・パイソンの大ファン。 プリンちゃんのオーナー。 プリンちゃん シュメッターリング型の神姫。 実戦経験がないので弱い。 戦闘よりもむしろ日常生活のパートナーである。 ちなみに“~ちゃん”までが名前。 過去に違法改造神姫、M6号として坂本を主としていた神姫の成れの果て。 藤堂 晴香(とうどうはるか) 武装劇団を名乗る“人形劇部”の部長。 美空と同じ女子高だが、面識は無かった。 舞薙(マイナ)と歌憐(カレン)という二体の神姫を所有している。 舞薙(マイナ) 怪しい言葉遣いの紅緒タイプ。 稼動時間が長く、かなりの経験を有する神姫。 戦闘経験も豊富で、劇団の殺陣(たて)担当。 どんな物語にも戦闘シーンを入れようとする困ったちゃん。 普通、浦島太郎やシンデレラにチャンバラシーンはありません。 彼女の言葉はフィーリングで書いているので、正確さは求めないでください…。 歌憐(カレン) 舞薙(マイナ)を姉さまと呼ぶイーアネイラタイプ。 強いお姉ちゃんに負けないように頑張る努力家さん。 ちなみに本編には登場しないが晴香の所有する神姫は2人だけで、残りの10名は他の部員の神姫。 作中はきっと修理とかで大慌てしてたはず。 松原 美樹(まつばらみき) 本編未登場。 神姫センターで働くオペレーターのお姉さん。 美人で愛嬌もあり、おまけに巨乳なため、祐一のお気に入りの人らしい。 タカさんを始めとするグラップラップシスターズのマスターでもある。 実は天海神姫センターの店長さん(!!)。 高嶺(タカネ) 本編未登場。 タカさん、おタカさんの愛称で呼ばれるグラップラップ。 別名『武装建機』のタカさん。 部下として11人のグラップラップを従え、バトルフィールドの補修整備を行っている。 フィールドを壊されると怒るが、本人もまた破壊魔である。 グラップラップシスターズ(ぐらっぷらっぷしすたーず) 松原美樹とおタカさんに忠誠を誓う11人のグラップラップたち。 それぞれに名前はあるが、「~号」と、コードネームで呼び合うのが好き。 ちなみにおタカさんは「リーダー」、美樹は「店長」と呼ぶ。 山南 三郎(やまなみさぶろう) 実に極道の子分ちっくな名前を持つ青年。 伊藤組の中堅若集。 実は密かに神姫ユーザーでヴァッフェシリーズの神姫を二体所有する。 最近、正体不明のライバルが出来たらしい。 ???(???) ビューティー仮面。 謎。 ビューティーマスク1号、2号のマスターらしい。 ビューティー仮面さまと呼ばれている。 ???(???) ビューティーマスク1号。 謎。 美しき力の戦士。 ???(???) ビューティーマスク2号。 謎。 美しき技の戦士。 ◆神姫オーナーではない登場人物。 稲造(いなぞう) 伊藤組の食客にして用心棒。 主に伊藤組の敷地内に侵入した不埒者の迎撃を自らに任じている。 幸いにして伊藤組に不法侵入するような輩は今のところ居ない。 居たらとても酷い目にあうことだろう。 ストイックな硬派で武人気質の頑固者。でも情にもろい。 藤堂 奈津子(とうどうなつこ) 晴香の母親にして旅館『季州館』の女将さん。 ショートカットの怜悧な美人さん。 娘を騙す(嘘を教える)のが趣味。 昔は南の島で怪しい研究をしていたかもしれない。 エドワード ベルウッド(Edward BellWood) リーナの父親。 名前の通り、祖先を辿って行くと王族にたどり着く由緒正しい家系。 もちろん現在の英国王室にコネクションがある訳ではない。 根っからのお人よしで世間知らずのボンボン。 リーナの一件を期に会社を立ち上げるがそれがリーナを悲しませることになるとは思っていなかった…。 現在は、規模を縮小した会社の経営者として適度に忙しい日々を送っているとか。 最近の悩みの種は、リーナが一緒にお風呂に入ってくれなくなった事。 芹沢 九十九(せりざわつくも) 神姫の初期開発に携わった科学者。 某大学で教鞭を取っていた事もある。 眼帯さんに追われる身となり逃走するが、現在はとある都市にて隠居中。 派手なアロハシャツを颯爽と着こなし、ビールとヒレカツが大好物だと公言して回る元気なおじいちゃん。 たぶん100までは余裕で生きる。 原田 大介(はらだだいすけ) 捜査四課、暴力団対応の刑事で荒事のプロ。 でも極道の辰由と職業理念を超えた友情で結ばれている。 ダメじゃん!? それって癒着!? でも気にしてない不良刑事。 近藤勇斗(こんどうゆうと) 天海中央病院に勤務する医者。 実は変態。 本当は産婦人科に勤務したかった。 ダメなら小児科。 それでもダメなので精神科に居るとか、なんとか。 結構ダメ人間。 いつか患者を10万馬力のサイボーグに改造したいという、危険な夢を持つ。 もちろんミサイルは内蔵する。 トコロで、村上、芹沢(九十九)、近藤、伊藤(観柳斎)、ビューティー仮面、〇〇〇○〇〇〇〇〇(←未登場)、〇〇〇和尚(←未登場)を合わせて天海変態七神将と呼ぶ。 芹沢香苗(せりざわかなえ) 天海中央病院に勤務するナース。 この作品はフィクションなので看護婦である。 看護師など存在しねぇ!! 近藤の暴挙に応戦し、日々患者をセクハラから守る正義のナース。 芹沢九十九の孫。 元スケバン。 松原 臣士(まつばらおみし) 誰だこれ? いまさら美空にアーンヴァルを売った、おもちゃ屋の店主とか言っても分からない。 現在は、あのおもちゃ屋は店を畳んでおり、彼は気楽な隠居暮らしに突入している。 娘の就職先である神姫センターに入り浸り、とある紅緒型(マイナの事)と囲碁など打って遊んでいるとか…。 ◆敵キャラ。 坂本 竜弥(さかもとたつや) 違法改造された武装神姫による闇バトルを開催していた青年。 闇に咲く花の一件にて辰由の手で警察に引き渡されたが、法的な罪自体はさして重いものでもないため、現在(本編開始時)はすでに出所しており自由の身である。 もちろん反省するような性格ではないので、今もどこかで復讐の機会を伺っている筈。 この作品唯一の悪人。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る -
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アンジェラスの愛を受け入れる。 こうなってしまったのもの俺の所為だ。 アンジェラスにとってこの罪とは愛情表現だ。 だから俺はこの罪を受け入れる。 「俺は愛してるよ、アンジェラス」 「ご主人様!」 アンジェラスの奴は俺の顔に飛びつきキスしてくる。 しかも狂ったかのように。 ちゅううっ…れろっ…くちゅくちゅくちゅっ…… 「…んふ…ん…じゅる………!」 「……んぅ………」 激しく唇同士ぶつけるアンジェラスと俺。 でも人間の俺に武装神姫のアンジェラス。 身長差が違うし唇の大きさも違う。 それでもアンジェラスは一所懸命にキスしてくる。 いや、キスというよりディープキスだ。 「ご主人様は私のモノ。この世の中でたった一人の…」 「………アンジェラス…」 「たった一人の愛しい人。殺したい程に…」 言い切り終わるとまたキスしてきた。 もう俺はアンジェラスに身体を預けていたので何されようがどうでもよかった。 そして明日から新しい生活が始まるのだ。 アンジェラスと俺だけの生活が…。 …。 ……。 ………。 「おい、ルーナ」 「あ、どうでしたダーリン?あたしの小説は??」 俺は神姫用のスケッチブックを机に置く。 そして一言。 「ボツ!」 「酷~~~~い!!!!」 俺の返事に困惑するルーナ。 どうやら期待していたみたいだ。 でも残念だったな。 結果はボツだぜ。 「ヤンデレなのはいいんだけど、なんで俺達がキャラなんだよ?」 「だって扱いやすいでしたんだもの」 「肖像権侵害で訴えてやろうか?」 「そんなぁ~…」 今度は泣きそうな顔をしながら俺に迫ってくる。 その時だ、ルーナの巨乳がブルンと動いたのは。 もう溜まりません。 性欲を持て余す。 「特盛り!」 「はい?」 「あぁーいや、何でもないよ!気にすんな!!」 「変なダーリン?じゃあ今度はオリジナルキャラクターで書けば大丈夫ですね」 「ん~まぁ、多少良くなるんじゃないのか」 「ではすぐに書きます!楽しみに待っていてくださいね、ダーリン♪」 「…おう」 できれば、書いて欲しくないがそんな事は…言えないよなぁ。 ルーナの心底悲しむ顔なんか見たくないしな。 でもなんでいきなり小説なんか書こうとしんたんだろう? 動機がさっぱり解からん。 まぁいいや。 俺はパソコンに向かいヤンデレが出てくるエロゲーを起動する。 えぇーと、確か三日前のセーブデータは…あれ? なんか知らないセーブデータがあるぞ。 試しにそのセーブデータをロードしてやってみた。 するとゲームはすぐに終わって画面はスタッフエンドロールになってしまった。 ちょっ!? もう終わっちまったぞ! 俺はここまでゲームを進めた覚えはないし…。 ん~! ちょっとまて、パソコン、ヤンデレ系のヒロインが出てくるエロゲー、そしてルーナが書くヤンデレ系の小説…。 あぁ~そいう事か。 ようやく解かったよ。 「ル~ナ~」 「な、なにダーリン?変な呼び方なんかしちゃって」 「五月蝿い!テメェ、また俺のエロゲーをやったろ!」 「ゲッ!?バレてしまいましたわ」 「『ゲッ』じゃねぇー!つーかぁ、毎回毎回俺のアカウントによく入れるよな。一周間ごとにパスワードを変えているんだぞ」 「ダーリンのパスワードなんてお茶の子さいさいですわ!」 「威張るな!今日という今日は許さん!!擽りの刑に処す!!!」 「キャハハハハーーーー!!!!ゆるじでーーーー!!!!」 俺の部屋でルーナの叫び声が響く。 その叫び声を聞きやって来たアンジェラス達。 そして俺とルーナが戯れている姿を見てクスクスと笑われたのは言うまでもない。
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「トリッキーな攻撃で相手を翻弄させるルーナで」 「あら、アタシを選んでくれるのね。嬉しいかぎりだわ」 右肩で、しなやか身体を動かしながら喜ぶルーナ。 まぁ喜んでくれるのは嬉しい。 だけど他の三人は少し残念そうな感じだ。 『後で他の奴等と戦うから、その時にな』と言うとパア~と明る表情になる神姫達。 さて、そろそろ対戦するか。 装備…よし! 指示…よし! ステータス…よし! ルーナを筐体の中に入れ、残りの神姫達は俺の両肩で座ってルーナの観戦をする。 「ルーナ、頑張れよ!」 「勝ったらご褒美くださいね、ダーリン!」 「油断しないでしっかりね。頑張るのよ、ルーナ!」 「負けるじゃないよ!一番最初の闘いなんだからな!!」 「ルーナさんー!頑張ってください!!」 「まかせなさい」 ルーナは少し淫靡な笑顔を俺に見せ筐体の中へと入って行く。 気がつくと俺は両手で握り拳をつくっていた。 いつになく俺の心は興奮していたのだ。 何故だろう? 多分、誰かを応援している事によって熱くなっているのかもしれない。 それとルーナに勝ってほしい、という気持ちがある…かもなぁ。 俺は筐体の方に目を移すと中には空中を飛んでいる二人の武装神姫達が居た。 READY? 女性の電気信号がの声が鳴り響き、一気に筐体内の中に緊張が走る。 勿論、外に居る俺達もだ。 FIGHT! 闘いの幕があがった。 お互いの距離150メートルからスタートして、敵のストラーフが接近しルーナは…あれ、ニコニコと笑いながら戦闘態勢にもはいっていないでその場で静止し続けている。 おいおい、これじゃあどう見たってルーナの方が不利だ。 出遅れもして更に武器すら構えていない。 いったいどうゆう事だ? 何か秘策でもあるのだというのか? 「はああああぁぁぁぁーーーー!!!!」 敵のストラーフがDTリアユニットplusGA4アームに付いてるチーグルで攻撃しようとした。 そこでルーナがクスッと笑い、背中に隠していたクライモアを取り出した。 ガギン! チーグルとクライモアがぶつかって鈍い音が聞こえる。 ルーナの奴、何時の間にあんな武器を隠し持っていたんだ? まぁ確かに装備させておいたけど…。 「残念でしたね~。そんな安直な攻撃では、あたしに届きませんよ」 ニッコリ笑うルーナ。 余裕綽々みたいだ。 あの自信はいったい何処から湧き出てくるんだろう。 「チッ!」 一度、ルーナから離れる敵のストラーフ。 ルーナの奴はクスクスと笑いながら追撃しない。 何故なんだろう、絶好の攻撃のチャンスだったのに。 「次はちゃんと攻撃してくださいね」 「クッ!バカにしてー!!このーーーー!!!!」 シュラム・RvGNDランチャーを準備しルーナに狙いを定める。 その間のルーナは…。 「あら、物騒な武器ですわね」 笑みを浮べながらビルの背にして移動する。 ちょっと、オカシイだろ! 普通、回避行動をしたり接近したりビルの背後に隠れたりするだろうー! なのに何故逃げづらい場所に行くのかな~。 訳解らん。 「クラエー!」 「当たればの話ですけど」 ドンー! シュラム・RvGNDランチャーから発射された弾がルーナを襲う。 でもルーナは避けようとする素振すらしない。 このままじゃヤバイ! 「避けろー!」 ドカーン! 俺が叫んだ直後、ルーナの背後にあったビルが爆発する。 煙がモクモクと噴出しルーナが何処にいるか解らない。 もしかしてシュラム・RvGNDランチャーの弾に命中し吹き飛び、ビルに当たったんじゃ…。 「あらあら。駄目でしたね~」 「えっ!?」 突如ルーナの声が聞こえた。 でも姿が見えない。 煙の中にいるのか? あっ! ルーナの奴、いつの間にか敵のストラーフの背後に居て右腕を回し、短剣のグリーフエングレイバーをストラーフの首に突きつけている! 何時の間にあんな所に居たんだ? まるで忍者みたいだ。 敵のストラーフは急所を突きつけられているので身動きが取れない。 寧ろ動いたらルーナに攻撃されると思っているのかもしれない。 「もう一度チャンスをあげます。次の攻撃で、あたしに命中しなかったら…貴女は負けます。いいですか?」 そう言ってルーナはストラーフから離れる。 また絶好のチャンスだったのに攻撃もせずに…だ。 完璧に相手の事をおちょくっているな、あれは。 お~お~ぉ、敵のストラーフは顔を真っ赤にして怒っているよ。 こえ~コエ~。 にしてもルーナの奴はなんであんなにも闘い慣れているんだ? 今日が初めてのバトルだというのに…。 「さぁ…遠慮なく攻撃してくださいね♪」 ニッコリと笑い、どっから見ても無防備に見えるポーズをする。 敵に対して火に油を注ぐような行為だ。 挑発、と言えば簡単だろう。 「このー!」 敵のストラーフはカンカンに怒りながらモデルPHCハンドガン・ヴズルイフを乱射した。 『フゥ…』と溜息をつき、顔を左右に動かすルーナ。 呆れてるようにも見える…だがすぐに真面目な顔つきになり。 「…!」 ん!? 消えた!? ルーナが敵のストラーフに向かって突っ込もうとする動作が視認出来たがその瞬間、オバケのように消えてしまった。 勿論、乱射されたモデルPHCハンドガン・ヴズルイフの弾はルーナに当たっていない。 そりゃそうだ。 なんたって標的がいないのだから。 「どこ!?どこに言ったの!」 「…ここよ」 声がした方に顔を向けるストラーフ。 向いた方向…ストラーフの真上だった! しかも空中で逆立ちしていた、逆立ちというよりもただ単に上下逆に飛んでるようなものだ。 「残念でした♪機会があったらまた会いましょう」 ルーナが言い終わると何故か敵のストラーフは地上に転落していき、ゲーム終了した。 筺体に付いてるコンソールを見るとストラーフのLPは無くなっていた。 ルーナが右手に持っている武器を見ると短剣のグリーフエングレイバーを持っていた、逆手持ちで。 目には見えない早業でストラーフをグリーフエングレイバーで切り刻んだのか? まさかな…いや、やっぱりそのまさかもしれない。 後で少し探ってみるか。 俺の方の筐体に付いてるスピーカーから『WIN』と女性の電気信号の声が鳴り響く。 多分、相手の方では『LOSE』と言われてるだろう。 そりゃそうだ。 勝ちがあれば負けもある。 二つに一つ。 「ダーリン、勝ちましたよ。ご褒美くださいね♪」 筐体の中で俺の事を見ながら喜ぶルーナ。 俺も自分の神姫が勝った事が嬉しくて微笑む。 両肩にいるアンジェラス達も喜びはしゃいでいる。 そうか…。 これが武装神姫の楽しみ方か。 確かにこれは楽しい。 おっと、ルーナを筐体から出さないといけないなぁ。 俺は筐体の神姫の出入り口の中に手を突っ込みルーナを待つ。 数秒後、ルーナは優雅な足取りで俺の右手の手の平に乗った。 そのまま俺は右手を自分の目線と同じぐらい高さまで持っていきルーナを見る。 「お前…何であんなに余裕で勝てたんだ?今日が初めてのバトルだろ?」 「そうですよ」 屈託のない笑顔で答えるルーナ。 最初は何か隠してるようにも思えたが…気のせいかぁ。 「それより早く~。ご褒美頂戴♪」 「あ、そうだったな。っと言ってもなー。ルーナはどんなご褒美がいいんだ?」 「そうですね~…あたしのオデコにキスしてください」 「ナッ!?キスだと!?!?」 「駄目ですか~?」 どうしよー。 キスかぁー…。 う~ん、ここでもしルーナにキスしなかったら…。 ☆ 「オデコにキスはちょっと…」 「そうですか。じゃあ、あたしからしますねー。濃厚なキスを…ね♪」 「や、やめろ!こんな人が沢山いるところで!!」 「もう遅いです~!ブチュー~」 「ギャーーーー!!!!」 ★ …ここはキスすべきだろう。 嫌な予感しすぎて背筋がゾッとするからなぁ。 「解ったよ。キ、キスしてやるから目を閉じろ」 「わーい。さぁっ!目を閉じましたから早く!!」 あぁ~、本当にキスをするハメになっちまったぜ。 ここは我慢だ、俺。 羞恥心を無くせ! ルーナをオデコに俺の唇を近づけさせる。 神姫だからオデコの広さ凄く狭い。 下唇が触れるぐらいが丁度いいかもしれない。 …チュッ 「…ンァ」 よし! 狙い通りに下唇をルーナのオデコにキスした。 キスした瞬間を見た他の神姫達が。 「いいなぁ…。ご主人様、ご主人様、次の試合は私を指名してください。絶対勝ちますから!」 「あー!いいなぁ~ルーナの奴~。よし!!次の試合はボクが出る!!!」 「あの…私のバトルは最後でもいいので…もし勝ったら、お兄ちゃんのご褒美くれますか?」 両肩で何やらルーナに嫉妬しているように見える三人の神姫達。 そんなにご褒美が欲しいのか? まぁ今日はトーブン、ここにいるから一応全員バトルさせてやるか。 すぐさま唇を離すとルーナが不満そうな顔しながら。 「あれで終わりですか?キスした瞬間、舌で舐め回してもよかったですのに」 「俺はそんな事しね~よ。つか、舐め回してって…」 「ダーリンの意気地なし。でも一応、キスしてくれたから許してあげます。気持ちよかったですし」 「許すもなにもないだろ。だぁー疲れた」 本当に疲れた。 体力が、というよりも精神的に…。 まぁいいか…、ルーナが気持ち良くなるのなら俺はなにも文句は言わん それにキスした時のルーナは可愛いかったし。 またキスしたくなるような表情だった。 ここでまた再びルーナのオデコにキスをすると乗っている三人に何されるか解らないのでキスはお預け。 ルーナを両手から右肩に移動させ、俺は次の筐体に向かった。 闘いはまだ始まったばかりだ。 「さぁ行くぞ!俺達のバトルロンドの幕開けだー!!」 こうして俺達のバトルロンドがスタートした。 そしてこの日からルーナの二つ名が出来た。 名は『刹那を操る者』…。
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戦うことを忘れた武装神姫・番外編 ちっちゃい物研・鳳凰カップ編-02 鳳凰カップ特別編便乗企画 「だー!! Mk-Z、手が空いてるんなら手伝え!!」 朝、開場したばかりの鳳凰カップ会場の一角。 CTaが相変わらずの油くさいメイド姿でわめきたてていた。 と、CTaのポケットに入っていたヴェルナがひょいと顔を出し、 「マスター、妙案があります。」 混乱するCTaに声をかけた。 「まもなく、久遠さんがこの付近を通過する模様です。いっそ、 臨時要員として使ってはいかがですか?」 「ふむ・・・そうだな、拉致るか。」 「拉致るってマスター、久遠さんなら言えば手伝ってくれるっ すよ・・・。」 傍のテーブルで物販の伝票に半ば埋もれながら整理をする沙羅 が言った。 東杜田技研として久々のイベントでの展示。 メインには、ちっちゃいもの研こと小型機械技術研究製作部の 製品展示を据え、脇では現行品の即売コーナーも。ついでに、 他の部署の紹介コーナーを設け、ちゃっかりリクルートまでも やろってしまおうという大胆ぶり・・・が仇となり、いつの間 にか責任者にされていたCTaは見事なまでの混乱っぷり。 「CTaさん、ダメです! 僕はこのあと相談コーナーに張りつか なくちゃいけないんですからっ!!」 Mk-Zも珍しくカリカリしている。 彼は神姫のメンテナンスに ついての相談コーナーを任されていた。 午前の部の整理券を配り終え、まもなく開始する相談コーナー の準備に手一杯・・・ 「マーヤ、機材は?」 「おにーさま、サーヤが機材に埋まりました~!!」 「うをー! 早く掘り出せ!! リーヤは?」 「展示のデモ神姫として、朝からあっちにかかりっきりです!」 「しまったー! そうだったー!!」 一人絶叫しながら、技研の他のスタッフとともに急ぎコーナー を整える。。。 「お、押さないでくださーい!!」 一方の物販コーナー。 早くも行列ができていた。 お目当て はポケットスタイルの先行販売。 整理券の配布をするは、半 強制的にバイトをさせられているかえで。 小柄であるが故、 声を張り上げてもなかなか認識されない・・・そんなかえでを フォローするフィーナ。 「整理券はお一人様一枚! はい、はいどうぞー!」 CTaから借りた特装セットからフライトユニット(イオが持って いるアレと同等品)を選び、かえでの頭上でプラカードを手に 飛び回る。。。 ・ ・ ・ 屋台コーナーの片隅の休憩スペースにて、まったり休憩の久遠 と彼の神姫たち・・・と。 「あ、マスター。あちら・・・八御津さんではないですか?」 イオが久遠の袖を引っ張った。 「ありゃ、ホントだ。」 久遠が気づくとほぼ同時に、向こうも気づいたようで、久遠の ところへやってきた。 おそらくUSアーミーの放出品であろう ジャケットの胸のポケットの部分には「碧空のスナイパー」の 異名を持つ兎子が収まっていた。 「こんにちは、久遠兄ぃ。」 「やっほぉ、みなさーん。」 明るく挨拶をする二人に、久遠たちも応える。 「もしかして試合出たんですか?」 シンメイの問いに、兎子のブリッツは神姫みかんストラップを 取り出した。今大会の参加者全員に配られたという、東杜田の 提供品だ。。。 「いやぁ、予選落ちっすよ。でも、いい試合ができたんで悔い はないっす!」 八御津はそういいながら久遠にフリーのコーヒーを渡した。 「いいところまで行ったんですよー。 ですが、あと一歩の所 で力負けしてしまって・・・。 おそらく、あの方たちは相当 の上位までいくと思います。」 相変わらずのさわやかさで、試合の顛末を語る兎子のブリッツ、 そして八御津。 ・・・やはり軽装に近い兎子だと、いざ力の 勝負となった際に押し負けてしまうらしい。 話のところどころに、二人の悔しさもにじみ出る・・・。 「そうだ、パワーアップと言えば、ちっちゃいもの研でパワー ユニットの試作機デモをやってるとかいってたなぁ。」 久遠が言うと、 「どうですか、東杜田のブース行ってみませんか?」 ロボビタンの試供品をすするイオも続けた。 「もちろんですよ。ポケットスタイルの先行販売も気になって いるんで。。。」 八御津と久遠は、それぞれの神姫をそれぞれに収めると、連れ だって東杜田へのブースへ向かった。 >>続くっ!!>> <<トップ へ戻る<<
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ネコのマスターのクリスマス・買い物編 家を出た俺と礼奈は近所にある大きなデパートを目指して歩いていた。 「んで、何で俺だけお前の買い物に付き合わなきゃならんのだ?」 「だって、クリスマスプレゼント買いに行くんだもん。タマちゃんの好みは兄さんに聞くのが一番でしょ?」 あぁ、そういう事か。そういえばもうそんな時期だったなぁ。12月は誕生日だのクリスマスだの大晦日だのイベントが多いからなぁ。 なんて個人的な事を思いつつ、俺はサイフの危機をどう乗り切ろうか悩んでいた。 そんなこんなでデパートに到着。ここら辺では一番大きいデパートだしクリスマス間近という事もあって、店内は人で埋め尽くされている。 「うわぁ、凄い人!ケーキとか残ってるかな?かな?」 一瞬礼奈が別の世界の礼奈に見えた気がするが、気のせいだろう。 それより本当にこれではケーキはもちろん普通のプレゼントだって相応しい物が見つかるか不安だ。俺達はまず一番心配なケーキを見に行った。 タマと俺が好きなチョコレートケーキと礼奈が好きな生クリームケーキはあったが、キルケが好きなフルーツケーキは既に予約がいっぱいだった。 仕方なくキルケの分も生クリームケーキにする事にして、予約をする。 次にプレゼントだ。礼奈はキルケに服を買ってやるつもりらしい。タマには何が良いか聞かれたが去年何を渡したか思い出せない。 仕方なくタマも服で良いんじゃないか?と言っておいた。 「そういえば兄さんはプレゼントどうするの?」 「ふっふっふ。実はもう買うものを決めてある」 「本当?楽しみだなぁ♪」 そうは言ったがさて困った。本音を言えばまだ誰の分も決めていない。 礼奈に鉈なんて送ったら怒られるか?あ、いやもちろん冗談だが。 自然に目が刃物のコーナーに行きそうになるのを押さえ、真面目にプレゼントを考える。 デパートは広いのでとりあえず別行動する事にした。 そして一人になった和章を遠くから見つめる影がひとつ。 「ターゲットを捕捉。ターゲットは妹と別れ一人で行動を開始した模様。」 影の主は武装神姫、タイプはヴァッフェバニー。手に持つ無線を介して誰かと会話をしている。 「了解。引き続き追跡、監視せよ。」 無線機からの声の指示を受け、その神姫は影へと姿を消した。 そのころの山田家。 「~♪」 私がマスターの帰りを待ちながら鼻歌を歌っていると、タマがこっちに来て 「ねぇ、ますたーとレナちゃんはなんでわたしたち置いてっちゃったのかな?」 と聞いてきました。タマはわかっていなかったんですか。 「それはですね、二人がクリスマスプレゼントを買いに行ったからなんです」 「くりすます・・・あ、そっか!そういえばもうすぐくりすますだったね!」 クリスマスすら忘れかけていたようです。そう言えば前和章様からタマは物忘れが多いと聞きました。何でも誕生日すら忘れられていたとか。 マスターはきっと和章様にとても凄いプレゼントをあげるでしょうね。あんな顔でしたから。 「ぷれぜんと、たのしみだな~♪」 タマがニコニコしながらそう言ってます。確かに楽しみですね。私はクリスマスプレゼントを貰うのは初めてなので、尚更楽しみです。 そう言えばマスターのお母様の神姫のペルシスらしき神姫が二人の後をつけていたようでしたが・・・何だったのでしょうか? 何者かの視線を感じ、俺は周囲を見回す。しかし俺を見ているのはレジ打ちをしている店員だけだ。 「・・・気のせいか?家を出てからずっと誰かに見られてる気がするんだが・・・」 「お会計21894円になりまーす」 「うぅ高い・・・家族持ちニートにこの季節は辛いぜ・・・」 そんな事を呟きながら俺は会計を済ませ、今買ったみんなへのプレゼントを袋に詰める。 すると同じく買い物を済ませたであろう礼奈が俺の所に来た。 「さ、あいつらが待ってるだろうし、帰るか」 「うん!」 タマ達の喜ぶ顔が目に浮かぶ。そのせいで一度電柱にぶつかったが、そんな痛みも気にせず俺は礼奈と一緒に家に帰った。 第六話につづく 第四話に戻る ネコのマスターの奮闘日記
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-3 『さあ! 今年もやってきました神姫センター春の祭典、マヤノスプリングカップ! 先日行われた一般トーナメントに続き、子どもの日である本日は小中学生によるジュニアトーナメントが開催されます。若人たちが熱きバトルを繰り広げるこのトーナメント、今年は第一試合から注目の参加者が登場だぁっ!!』 マイクを持った司会者はそこで一拍置くと、筐体の一角にスポットライトが当たる。 『当神姫センター注目の上位ランカー! 女子中学生にして総合ランキング6位の実力者、伊吹舞とその武装神姫、マオチャオのワカナだぁぁぁっ!!』 筐体のシートに腰掛ける伊吹とエントリーボックスに立つワカナの姿が、ライトに照らされながら手を振る。周りの観衆から送られる盛大なエール。 その光景をシュンは隣のシートから、あっけに取られて眺めていた。 「伊吹とワカナ……すごい人気だなぁ」 「ランキング上位者で、優勝候補ですからね。当然ではないでしょうか?」 「……まあね。その代り僕たちは完全に空気だけど……」 続いて司会者がシュンとゼリスを紹介するものの――伊吹のクラスメイトである新人マスターとその神姫、程度の簡素なものだった。 ゼリスがジュニアトーナメント参加者にしては珍しい、オリジナル武装タイプであることがちょっと関心を集めたようだが……観衆の興味は完全に伊吹とワカナに集中している。 もっとも、それで言ったら可哀相なのは対戦相手の方か。 向こうも中学生同士のコンビらしいが、ガチガチに固まって完全に緊張している。……まあ、一回戦から優勝候補と当たってしまったんだから当然かもしれない。 だからといって、同情している暇はない。シュンだって公式大会は初参加だし、ゼリスはオーラシオン武装で初の実戦だ。遠慮なんてしている余裕はない。 ゼリスとワカナ、そして相手の神姫二体が筐体にエントリーしていく。 その間に、シュンは伊吹と簡単な作戦会議を済ませる。 「まずワカナが前衛に出るから、ぜっちゃんは後衛についてサポートよろしくね?」 「リョーカイ。それでいいよな、ゼリス?」 「はい、問題ありません」 シュンに頷き返しながらゼリスがバトルフィールドに出現する。オーラシオン武装の白い装甲が、ライトに照らし出され美しく映える。 4体の神姫がそれぞれフィールド上に配置される。 『REDY GO!』の合図で試合が始まった。 「いっくよ~っ!」 試合開始と共に、ワカナが相手に向かって突進していく。 ふいを突かれた相手の神姫――二体の天使コマンド型ウェルクストラが慌てて散開する。 「ワカナっ、左の相手に攻撃よっ!」 左に逃げた一体がバランスを崩した隙を見逃さず、伊吹の指示に従ってワカナが装甲一体式のナックル――裂拳甲(リークアンジア)ですかさずラッシュをかける。 防戦一方になる仲間を援護しようと、もう一体のウェルクストラがサブマシンガンを構える。が、それを別方向からの銃撃が阻む。 ハンドガンを構えたゼリスが、的確な射撃で相手の動きを封じていた。 「よしっ! ゼリス、そのまま牽制だ」 「どちらかと言えば、私も接近戦の方が好みなのですが……」 「おいおい……慣れない武装でいきなり無茶しようとするなよ」 渋々といった様子で、ゼリスは指示通り相手の一体と距離を置いての射撃戦を開始する。 ウェルクストラのアルヴォPDW11に比べ、ゼリスの使っている専用ハンドガン"エスぺランサ"は連射力で劣る。しかし、ゼリスはフィールドの遮蔽物を巧みに利用しながら互角の撃ち合いを演じていた。 新武装の調子も、今のところは特に問題無いようだ。 撃ち合いを続けながらゼリスはウェルクストラを徐々に誘導し、仲間と分断させる。 相手が気がついた時には、すでに離れたもう一体のウェルクストラはワカナの猛攻にさらされてKO寸前となっていた。 こうなってしまえばもう、勝負は決まったも同然だった。 試合開始から1分後―― 『これはつよぉぉぉいっ!! ワカナ&ゼリスチーム、怒涛の攻撃で相手チームを連続OK! 優勝候補が見事、初戦を圧勝で飾ったぁ!!』 シュンたちは危なげなくトーナメント一回戦を突破した。 * トーナメント大会は神姫センター5階のアミューズメントフロアが会場となっている。 このフロアの一角には神姫に関する講習会を開くためのセミナールームもあり、そこがトーナメント参加者の控え室となっている。 一回戦を終えた後、シュンたちはそこでゼリスたちのコンディションをチェックしていた。 「ふう~、パーツはどこも問題無さそうだな」 「シュン。問題が無いのなら、次はもっと積極的に攻めてはどうでしょうか?」 「……ダメだ。それでトラブルが発生したらヤバいだろう」 シュンにたしなめられ、ゼリスは「むぅ~~」と不満ながら一応納得する。 現状では、まだ不安が残るオーラシオンの肩アーマーパーツ。姿勢制御とメインスラスターを兼ねるこのパーツこそ、ヒット&アウェイを主体にした機動戦での要になる。 万全でない状態で全開戦闘を行って、もし不調を起こしでもしたら……たちどころに窮地を招く結果となるだろう。 「大丈夫よ、ぜっちゃん。このくらいの大会ならワカナだけでもラクショーよ。心配しなくてもオーケーオーケー♪」 伊吹は呑気にモニターで他の試合を観戦しながら、余裕の表情をしている。その隣のクレイドルでは、ワカナがさっそく昼寝タイムに入っていた。緊張感のないコンビだなあ…… 本物の猫みたいにゴロゴロ眠る姿からは、このワカナが一回戦で嵐のようなラッシュで一体目を倒し、二体目もあっという間にノックアウトしてしまったスーパーファイターとは思えない。 能ある鷹は――もとい、猫は爪を隠すってやつか? 最後のフィニッシュは研爪(ヤンチャオ)で決めてたし。 「ふむ……確かにワカナさんの強さなら、私たちはバックアップに徹するだけでも勝ち進めるでしょうね……」 同意しつつ、ゼリスの口調はいつもと違って歯切れが悪い。 「ゼリス。思う存分戦いたいだろうけど、もうしばらくは我慢してくれよ。せめてユウが来るまではな」 由宇がゼリスのメカニックについて、最終的な調整をしてもらえば後は思いっきり戦っても大丈夫だろう。 そのためにも、しばらくはこのまま堅実に戦ってデータを集めないと。それになんだか今のままでも、伊吹とワカナだけでトーナメントを勝ち進めそうだし…… (下手にリスクを負うこともないよな。このまま勝ち進めるならそれでも……) そこまで考えて、シュンは何か胸につっかえるものを感じる。 なんだろうこの感覚は。このまま何もしないで勝ち上がれるなら、問題はないはずなのに。 ……何もしなくても? 「シュン……シュン!」 ゼリスに袖を引っ張られ我に返る。 気がつくとゼリスがジッとシュンを見上げていた。澄んだエメラルドの瞳に見つめられ――シュンは気まずくなって目を反らす。 「シュッちゃんどうしたの? 急にボーっとしちゃって……」 「なんでもないよ。えっと……喉が渇いたから、ちょっとジュース買ってくる」 不思議がる伊吹にとっさに言い訳をしつつ、シュンはその場から逃げるように席を立った。 控え室のドアをくぐると、トーナメント会場の歓声がここまで聞こえてくる。 あたかも試合の熱気までそのまま伝わってきそうだ。こうして外野から眺めてみると、さっきまで自分もいたはずのその場所が――まるで別世界のように感じらる。 群衆の中を歩き、シュンは一人考える。 このままシュンが何もしなくても勝ち進める。 試合は伊吹とワカナに任せればいい。特に指示を送らなくても、ゼリスはバックアップくらい無難にこなすだろう。あとは由宇の武装の調整がうまくいけば、何の問題もない。 ――それで? 問題なかったとして、その中でシュンは何をしたと言えるのだろう。そんなんでゼリスのマスターって言えるのか? 僕には一体、何ができるんだ――。 (僕はゼリスのマスターであっても、ひょっとしてあいつにとっては必要な存在じゃない……のか?) 伊吹とワカナはもちろん、由宇もゼリスもすごいヤツラだ。一緒にいるシュンだからこそよく分かる。 でも……彼女たちに比べれば、自分は何もできない凡人に過ぎないのではないだろうか。 考えれば考えるほど思考がマイナスになっていく……。 シュンはまとわりつく不安を振り払うように、強く頭を振る。 (とにかく今は次の試合だ。こんな気持ちのまま周りの足を引っ張っりでもしたら、余計にダメダメじゃないか) シュンは強引に思考を切り替える。みんなのところに戻ろう……そう思い、踵を返したところで気がつく。 あ……そうだ。一応ジュースを買って帰らないとおかしく思われる。伊吹はあれでなかなか鋭いし、ゼリスもなんだかんだで敏感にシュンの気持ちを察してくる。心配をかける訳にはいかない。 自販機は確かフードコートにあったはず――くるりと振り返ったところに、いきなり何かが激突した。 「うぎゃ~~っす!!?」 シュンが驚きの声を上げるより先に、甲高い悲鳴が聞こえてきた。 顔を上げると、目の前に武装神姫を連れた少年が転がっていた。どうやら彼がシュンにぶつかってきた相手らしい。 転んだ拍子に打った膝の痛みに顔をしかめつつ、シュンは立ち上がりながら少年に手を差し伸べる。 「えっと……君、大丈夫?」 「おっと。こりゃ兄ちゃん、すんまへんなあ」 彼の手を取って関西弁の少年が立ち上がる。 シュンと同年代か少し下くらいだろうか? 快活そうな男の子だ。 「ごめんな、兄ちゃん。オレこっちの神姫センターは初めてでな~。ちょっと迷ってもうて、急いでたんや」 「なるほどね。でも人が多いところでは、あまり走ったりしない方がいいぞ?」 「うん、これから気をつけるわ!」 シュンが注意すると少年は素直に頷いた。……うんうん、元気があって大変よろしい。 妹がいるせいか、年下の相手にはついつい兄貴ぶってしまうのがシュンの癖だった。 「あかんわっ、大丈夫かフッキー!?」 フッキーと呼ばれた少年を心配するように、肩に乗る彼の神姫――寅型MMSティグリースが騒ぎ立てる。 どうやらさっきの悲鳴も、この神姫のものだったらしい。 「心配あらへん。こんなんちょっと転んだだけやし」 「せやかてフッキー! アンタ耳たぶがこんなに大きく腫れ上がってしもうて……」 「アホかっ、この福耳は生まれつきやっちゅーねん!」 突然始まったボケとツッコミの応酬に、あっけに取られるシュン。 ……なんだこのふたり。神姫とマスターでお笑いコンビでも目指してるのか? シュンの様子に気がついて、関西弁の少年――フッキーが照れ臭そうに笑う。 「あ~、すんまへん。こいつ気がつくと、すぐ今みたいにボケ始めてな~。ホンマ誰に似たんやろうね?」 「マスターのアンタに決まっとるやんっ!」 ビシッとツッコミを入れるティグリース。ダメだこのふたり。放っておくと、いつまでも延々漫才トークを続けそうだ。 「あの……コントの最中に悪いけど、君たち急いでたんじゃないのか?」 シュンが指摘すると、フッキーとティグリースはハッと気がついて慌て出す。 「そやった、オレら急いでるところやったんや!」 「あかんでフッキー……早くせんと遅刻してまうで?」 「おお、そんなんなったら怒られるで。じゃあな、兄ちゃん。またどっかで会おうな!」 早口で捲し立てると、少年と神姫はすぐさま人混みの中に消えていった。 シュンは笑いを堪えつつ、そんなふたりに手を振って見送る。 やれやれ……何というか慌ただしいコンビだった。お蔭でさっきまでいろいろ滅入っていた気分が吹き飛んでしまった。 なんだかスッキリした気分で、シュンは控え室に戻る。 彼がジュースを買い忘れたことに気がついたのは、そのことをゼリスに指摘されてからだった。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る